山下湘南夢クリニック「不妊と鍼灸治療」講演記録-2
.東洋医学で考える妊娠
..東洋医学で考える身体の臓腑
五臓六腑という言葉を聞いた事がありますか。
東洋医学では、五藏(肝、心、脾、肺、腎)という中心になる臓と、
六腑(胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦)という腑でからだ全体が構成されて
いると考えています。
【イメージ図 東洋医学の五藏六府】
よく、東洋医学は自然の力を利用してといいますが、私はもう少し踏み込んで考えて頂
きたいと思っています。東洋医学も医学です。
たんに「不妊によい」という治療があるのではなくて、
「あなたの不妊の状態にはこの治療がいい」ということがあるのです。
不妊と言えば当帰芍薬散(^^ゞではなくて、
あなたの不妊には当帰芍薬散、
あなたの不妊には補中益気湯というように、
まずあなたの身体をしることが、東洋医学で始める第一歩です。
..『妊娠に致る一連のシステムがスムーズにおこる』ことが一番大切
妊娠というのは、非常に沢山のステップが積み重なり、その上に成立するものです。
一番難しい卵と精子の出会いを応援してもらう体外受精ですね。その応援の力を借りながら、
この一連のシステムをスムーズにおこるように考えていきましょう。
このシステムを一番下支えするのが先ほどお話しした土台の力(腎気)の部分です。
土台の力に支えられて、暢びやかな心身が精子と卵子の出会い受け止め、働き、動くことで受精卵と
なります。その後数日をかけて受精卵が大きくなり、開かれた母体との出会いである着床となります。
不妊でお悩みの方は、何が悪い?どこが悪い?という発想になりがちですが、
この巧妙なシステムがスムーズにおこることもとても大切な要素となります。
取り立てて問題となるような原因がないと病院で言われた方の場合、このシステムに何らかの
不調がでスムーズに発動していないのではと私は考えています。
とくに、IVF-ETしても上手く着床しないというときには、卵ちゃん自体の生命力も大きく
関与するのは当然ですが、母体の腎気の弱さ、気の欝滞との関連が大きく考えられます。
本来、リラックスして大きく開かれ受け止められるべき存在である母体が、緊張や腎気(生命力)の
不足により、固く閉ざされていることと関連が強いのです。
排卵を促すホルモン治療を受けて、沢山の排卵が確認されている。
精子の状態もよい。
ましてや体外受精でよい卵も戻している。
そんなときに妊娠が成立しないときは、一番考えて欲しいポイントがここです。
ひとつひとつが悪いのではなく、全体のシステムがスムーズに動いていないのです。
全体のシステムがスムーズに動くようにしてあげる必要があるわけです。
これには、土台の力をつけること、身体のストレス状態を取り除くことです。
私が冒頭であげたかたが、泣きはらしたことで妊娠されたのは、この身体のストレス状態が
取り除かれたんだなあと思っています。
東洋医学で考える統一的観点がいきるところでもあります(^_^)
.ご自身で出来るからだ作り
不妊対策の身体作りには、身体の土台の力をつけることを目標にしていきます。
身体の土台の力が充実することで、暢びやかな心身がはぐくまれます。
この健やかな心身ではぐくまれた精子と卵子があわさることでひとつの新しい生命ができます。
そして、土台がしっかりとした母体は、新しい卵を自らを開き、優しく受け入れることで一体となるわけです。
土台の力である腎気が充実した母体にはぐくまれ十月十日の年月をすごし、実った果実が蒂から落ちるように出産の日を迎えます。
妊娠だけがゴールじゃないんですよね。受け止めた新しい命を誕生まで自分のお腹で育てるのが妊娠です。
しっかりと身体作りをしてくださいね。
妊娠、出産にむけてご自身で出来る身体作りをご紹介しましょう。
...身体作りの中心課題は、『生命力を養う』ことです。
からだの『生命力を養う』には、ふたつのポイントがあります。
それは東洋医学的に説明しますと、
腎気という土台の力を養うこと
脾気という胃腸の力を養うこと
この二つになります。この二つを養うための方法を考えていきましょう。
大切なのは、よく眠ること、充分歩くことなどです。
また、間食をやめ、発散(ストレス解消)などは自分の土台の力とよく相談して
行うことも大事です。.
..お灸をしましょう
お灸は手軽な健康法です。先ほど申し上げた身体の土台の力をつけたり、胃腸の力をつけたり
するには最適です。是非習慣にしてください。
お灸は、出来れば鍼灸院で、あなたにあったお灸のポイントを発見してもらいましょう。
ここでは、どなたでも使って頂ける基本的な身体を養うツボをご紹介しておきますね。
とくに、体外受精の周期に入った方はこれらのツボはお勧めです。
また、卵を戻した後は、手足など末端の経穴はお休みにして骨盤の次髎などの経穴にお灸をしてください。
(経穴図プリント参照)
.身体作りには、東洋医学的診立てが必要です。
..情報を整理しましょう
不妊でお悩みの方の御相談に乗ると、
『なにがなんだかわからない』
『優先順位をどう考えればいいのか迷う』
『なにをすればいいのかわからない』
『精神的な不安感で辛い』
『治療が進むほど、結果が出ないのに、体調だけが悪化する』
『年齢がどんどんすすむのが恐い』
『妊娠できないかもと思うと、次の治療が恐くて受けられない』
などといった、悩みが噴出してきます。
一番大事なのは、今のあなた自身の情報を整理することです。
情報には、ご夫婦のお身体の問題について、西洋医学的な側面と、
東洋医学的な側面の情報があります。
身体作りで大切なのは、東洋医学的な情報です。それは、
目先の症状について考えるのではなく、あなたの人生を応援するのどのような方向性の身体作りなのか?といった観点で考えていくことが重要だと思います。
時間を大切にして、しっかりと「不妊!大作戦」をたててください。
そしてあなたの人生を応援できるような方針でお身体作りをしていってください。それは決して、不妊に効くといわれるツボにお灸をしたり鍼をしたりすることをさしているのではないのです。東洋医学で命をみるということは、流れの中の生命を応援していくことだと私は思っています。
.最後に
私のhpに、「赤ちゃんと出会うための14年の旅」というというご本人と一緒に書かせていただいた
エピソードがあります。
この方、20代前半から妊娠したいと病院選びされ、30代からIVF-ET。このときには、卵管に戻すIVF-ETとか、
着床によいとされる子宮内膜掻爬、沢山の薬剤を使っての誘発をおこなっていました。
35歳の時に、休憩だということでうちの治療院にいらっしゃいました。
少し休憩して私の治療院でお身体作りをされる時間をとったのち、その方は「じゃあ行ってみるか」とklcに
いかれました。一回目は受精せず。そして2回目の採卵で胚盤胞が3つ凍結。ものすごく喜んでいらっしゃいましたが、
全部ダメ。
ここでご本人から「やめる宣言」が出ました。私も、それまでの長い長い不妊治療歴を
存じておりましたから、やはり無理なのかと思いました。
そして、それから2ヶ月後klcの待合室から
「やっぱり始めた、鍼灸の予約を」というメールが入り、鍼灸治療とIVF-ETを平行して進みました。
そして、このとき、この方にとっては初めて「あまり良くない卵」「胚盤胞でも小さい」などの状況で
ご本人は「もうどうせダメ」という状況でした。
それなのに、いままで戻したどんな卵よりも条件が悪かった卵なのに、無事に着床、妊娠。
そしてご出産となりました。
それまでの、16回に渡るIVF-ETでほとんどかすりもせずの状況から一点、妊娠、出産へと
いたるみちになったのです。元気な赤ちゃんをご出産され、いたずら坊やを私にもみせに
来てくださいました。うれしい限りです。
不妊治療をしていると、「よい卵、グレードの高い受精卵」を目指すことにはなります。
それが妊娠への道にもつながりますものね。
でも、私は「運命の卵」と出会うことが一番なんだなとこの方の妊娠を通じて
強く思いました。
良い卵は確かに、運命の卵である可能性は高いのでしょう。
グレードの高い卵ですんなり妊娠、出産された方も沢山存じ上げています。
でも、困難な状況の中、運命の卵と出会い、ご出産された方の背中も沢山みてきました。
あなたにとっての、運命の卵との出会いをお祈りしています
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