8)アトピー不妊(IVF-ET)弁証論治
8)アトピー不妊(IVF-ET)弁証論治
38歳 女性
主訴:不妊症、アトピー性皮膚炎
家族歴:がん、不整脈、アレルギー
..問診
子供の頃から手足に湿疹がよくでていた。
高校から大学にかけてアトピー悪化。
大学生のときに、脱ステロイドを試み、尿が出なくなるなどで半年入院。
以来、ステロイドは使用せず民間療法などでコントロール。
25歳、28歳のときにアトピー悪化のため、断食道場にて治療(好転)
このころより、尿の切れが悪く力をいれないと出ない感じがある。
アトピーの状態について。
イライラすると、かいてしまう。
冬になって乾燥すると悪化、
春先から梅雨明けまでは水泡が出たりしてもっと悪化。
真夏から秋には海にはいったりして良好になる。
..不妊治療歴
36歳結婚、妊娠希望
近くの病院にいく
タイミング指導を受け半年ほど経過
卵管造影で両方卵管狭窄判明。
別の病院で、卵管造影をするも良好な結果。
漢方薬(当帰芍薬散合当帰建中湯)を服用
37歳~38歳
不妊専門クリニック受診
IVF-ET 1回目 自然周期ー妊娠せず
IVF-ETのために1ヶ月前からホルモン剤を服用してから急激にアトピー悪化。
体表面がもわーっとする感じ。下半身はさほどアトピーが出ていなかったが
ホルモン剤を飲み始め、太ももの内側から足の甲まで悪化し、
内側からじくじくする感じになっている。
高温期を維持するホルモンを飲んでも、しっかりとした高温期にならない。
...生理の状況
初経13歳、28-30日周期(多少遅れることが多い)
生理前5日から胸が脹り、下腹が少し重い。
生理の1,2日が量が多い。(月によって大きく量が変化)
生理痛はさほどでもない。
塊は20代前半から出ていて、20代後半がとても多かった。
..普段の状況
体調が悪いと、立ちくらみがしたり、足がむくみやすい。
夏、夕方は調子がいい。
冬、クーラー、梅雨、季節の変わり目、朝は睡眠不足は調子が悪い。
風邪をひくと、鼻水、便秘、下痢。
食欲は大食、よく食べるおいしい。食べるのは遅い、時間は規則的。
よく噛んで食べる。食後に時々胸焼け腹脹がある。
7部づき米、納豆をよくたべ、肉魚は半々ぐらいで食べる。
間食はよく取る。
便通は1日1回
便通のためにプルーンを取っている。そのため軟便。取らないと出ない、
出てもコロコロ。便器につくことはほどんどない。臭いはきつい。
口舌喉がときどきかわく、粘る。
小便は一日6回。
残尿感はよくある。尿切れがわるいときもよくある。
尿の色は白濁、夜間尿はない。
睡眠、寝つきは普通、眠りは深い、寝起きは悪い。
疲れが残ることはめったにない。
..切診
左関上ー力がない。
舌、潤、全体に白苔 やや赤い、舌裏より紅い
脾募あり(左大きい)
関元抜け、
左列缺、熱感ゆるみ、
左神門~霊道ゆるみ、
左合谷ゆるみ、
左後谿ゆるみ
右足三里大きい
左足三里冷え、大きい
右申脈冷え、
右臨泣冷え
左三陰交、公孫冷え
大椎周り、さほど目立たないがやや冷え
左右肝兪すじばり
左右脾兪から胃兪 陥凹きつい(右の脾兪が一番きつい)
..五臟の弁別
...肝
生理に塊が混じる(オケツの可能性)
左関上ー力がない(肝気の緩みの可能性)
右臨泣冷え(オケツの可能性、肝胆の冷えの可能性)
左右肝兪すじばり(肝気の緩みの可能性)
...心
口舌喉がときどきかわく、粘る(心熱の可能性)
舌裏が紅い(心熱の可能性)
左神門~霊道ゆるみ(心気の緩みの可能性)
...脾
春先から梅雨明けまでは水泡が出たりしてもっと悪化
(脾気が弱く湿痰がたまりやすい可能性。外湿と呼応しやすいとい可能性)
子供の頃から湿疹が出やすい(脾気が弱い可能性)
25歳、28歳のときにアトピー悪化のため、断食道場にて治療(好転)
このころより、尿の切れが悪く力をいれないと出ない感じがある。
(断食により脾気が好転しアトピーが良好になった可能性と、断食により腎気を落とした可能性)
夏、夕方は調子がいい。(腎、脾の陽気不足の可能性)
冬、クーラー、梅雨、季節の変わり目、朝は睡眠不足は調子が悪い。
(陽気不足、内湿、脾虚の可能性)
風邪をひくと、鼻水、便秘、下痢。(脾気の弱い可能性)
プルーンを食べないと便が出ない(脾気の弱い可能性)
食欲は大食、よく食べるおいしい。食べるのは遅い、時間は規則的。
よく噛んで食べる。食後に時々胸焼け腹脹がある。
(脾気の器は小さく、本人は無自覚だが、本能的に脾胃を守ろうという行動になっている)
脾募あり(左大きい)
右足三里大きい
左足三里冷え、大きい
左三陰交、公孫冷え
大椎周り、さほど目立たないがやや冷え(陽気不足)
左右脾兪から胃兪 陥凹きつい(右の脾兪が一番きつい)
...肺
真夏から秋には海にはいったりして良好になる。(湿度により表衛が養われる可能性、肺気が楽?ということ)
左列缺、熱感ゆるみ、
左合谷ゆるみ、
右申脈冷え、
大椎周り、さほど目立たないがやや冷え(風邪の可能性)
...腎
子供の頃から湿疹が出やすい(先天の器である腎が小さい可能性)
脱ステロイドの過程で尿が出なくなる(腎をいためた可能性)
25歳ごろから尿切れが悪い(腎が弱い可能性)
IVF-ETのために1ヶ月前からホルモン剤を服用してから急激にアトピー悪化。
(ホルモン剤により腎気を弱めた可能性)
25歳、28歳のときにアトピー悪化のため、断食道場にて治療(好転)
このころより、尿の切れが悪く力をいれないと出ない感じがある。
(断食により脾気が好転しアトピーが良好になった可能性と、断食により腎気を落とした可能性)
夏、夕方は調子がいい。(腎、脾の陽気不足の可能性)
高温期を維持するホルモンを飲んでも、しっかりとした高温期にならない。
(素体の腎陽不足の可能性)
体調が悪いと、立ちくらみがしたり、足がむくみやすい。
(腎気の不足の可能性)
冬、クーラー、梅雨、季節の変わり目、朝は睡眠不足は調子が悪い。
(陽気不足、内湿、脾虚の可能性)
残尿感はよくある。尿切れがわるいときもよくある。(腎気が弱い可能性)
関元抜け
右申脈冷え、
...不妊(メモ)
高温期を維持するホルモンを飲んでも、しっかりとした高温期にならない。
(素体の腎陽不足の可能性)
ホルモン剤で大きく体調が変化
舌裏の色がより紅い
生理に塊がまじる
生理の量が月により大きく変化
..病因病理
小さい頃から手足に湿疹がでやすいなど、先天の器の小ささを思わせます。
20代に急激に悪化したアトピーに対して脱ステロイドをして頑張ったため、尿が出にくくなる
という腎に負担をかけています。またその後、悪化したアトピーに対して断食道場で過ごすことで、
脾気が救われアトピー自体は好転するものの、尿が出にくくなる、尿切れが悪くなるなどの状態に陥り
その後、継続しています。
これは、アトピーは脾気を救うことで好転するものの、強行的な手段により、腎気を損傷し、
器を一段小さくしたのではないかと考えられます。。
その後は器にあわせて、のんびりと生活することで、アトピーとの上手な付き合いの出来る状態となり、
小さい腎気の器、弱い脾気でありながら、大きく困る状況にはならずに経過しています。
しかしながら、現時点で腎気の器も小さいままですし、脾気の状態としては、春先から梅雨明けまでは水泡が出たりしてもっとも悪化するなど、内湿の可能性を思わせますし、プルーンを食べないと便通がない。脾募の状態、足三里の状態などの体表観察からも脾気の弱さはきつく感じる状態ではあります。
主訴は不妊です。
年齢が高いことや、卵管の問題で、IVF-ETに挑戦され残念ながら結果がでずというところです。
不妊治療は、ホルモン剤を投与して、排卵を促すことになります。これは、通常でも身体の下焦の力で
ある腎気を消耗させ素体を疲れさせます。
本症例の患者さんは、もともとの器の小ささと、アトピー性皮膚炎との付き合いの中で腎気の器を
小さくしていることもあり、ホルモン剤の投与でかなりきつくアトピーが悪化しています。
ホルモン剤は、腎気を奮い立たせ排卵を促します。このため、より腎気を落とし、内熱を生じ、脾気に負担をかけ
身体の下部である下肢に内側からじくじくする感じでアトピーが悪化するという状態になっています。
また、高温期を維持するホルモン剤を飲んでもしっかりあがらない高温期は、もともとの素体の力の不足、
とくに腎気の不足を思わせます。この腎気、腎陽の不足状態では、妊娠しても継続できないであろうことは明白です。
妊娠のためには、まず、不妊治療で使われるであろう腎気の消耗に対してついていけるように腎気を補う。
腎気、とくに腎陽が補われることにより受精卵が着床し子宮内膜で成長していける力をつけるようにしていきます。
また、妊娠は母体の脾腎の力をとても使います。赤ちゃんのためにも母体が充実していることは大切ですが、
ご本人にとっても、アトピーを悪化させないため、無事のご出産をなさるために、腎気を補い脾気を建てることが
肝腎です。
不妊治療に負けない身体作り、妊娠に充分耐えうる身体作りを目指します。
..弁証論治
弁証:脾腎両虚
論治:補腎健脾
治療方針:
ホルモン剤の投与に耐えるように腎気をたてることがまず第一。
IVF-ETによって、胚を戻した後は、腎陽を中心にたて、子宮を暖かく充実した場所となるようにし、
着床を助け、初期の流産を防ぎます。
妊娠が継続できたら、脾腎の器をたて、母体の充実、出産への備えを出来るだけしていきます。
遠方からの来院ですが、週に2日の治療と、ご自宅での毎日の施灸を指導。
..生活提言:
体外受精に挑戦してみるもまだ結果が出ていない状態です。
素体の器の小ささの影響を受け、ホルモン剤の投与で非常に大きな身体のぶれを生じています。
妊娠するための不妊治療ですが、刺激を受け取るだけの素体がないと、せっかく胚を移植しても
受け止めらず妊娠することが出来ません。
身体の力を充実させ、赤ちゃんの卵をしっかりと受け取れる体にしましょう。
また妊娠がゴールではなく、出産したくましい母となることが大事です。
目先の結果を負うのではなく、身体作りを考え、長い目で妊娠ー出産を考えてきましょう。
アトピーとは上手につきあっていらっしゃいますが、身体に負荷をかける不妊治療では
状態が悪化しがちです、胃腸の力を落とさないように、過食や甘いものに注意して、身体作りを
心がけましょう。
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